解放

あ、と思ったのだった。
弟が転勤で我が地方に帰ってくるという。助かったと思った。頭の片隅にずっとある、親の介護のことだ。何かあったら私が行かねばならないと思ってしまっていた。実家へは距離があろうと逃がさない、絶対に介護は姉弟ふたりでやると決めていた。じゃなきゃ認めない、苦労したのに喪主になれないのなら、と思って弟を呪っていたのだが。長女の呪いだ。長女の呪縛だ。家を捨てられないのを自覚していたから。
でも、弟が近くに住まうなら、もう私はどこにでも行けるのだ。気にせずに。私が転勤したっていいのだ。たからづかがあるから動きたくないけど。
それは家を捨てるのではなく。
出て行こう。ひとりでどこかに行こう。私の暮らしを作ろう。そんなことを思えた。